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2011/07/01 [ 写真家の目 ] |
東海道新幹線が開通したばかりの頃だったと思うが、仏像写真で有名な写真家「土門 拳」が書いた一文が新聞に載っていた。おそらく、初めて新幹線に乗ったときの感動を記したものと思われる。 車窓から景色を眺めていると窓枠に目がとまる。彼が見つめているのは窓枠そのものではなく、窓枠をを留めているネジである。プラスのネジだ。(プラスネジのはしりのようにも思う)このネジのプラスの溝が、どれもかならず水平垂直に向いていると感動しているのだ。もちろん、プラスの溝が水平垂直に向くように締めつけた職人の感性に対してである。さすが写真家の美的感性だと思ったものだ。 ところが私は、ネジは固く締めるものだからギリギリと締めつけて、それ以上いかないところで手を止めるものと考えた。だとしたら、必ずしも水平垂直にはならないはずだ。あえて水平垂直にしようとすれば、偶然の可能性は別として、最後まで締めつけた後、水平垂直に見えるところまで戻すことになる。とうぜん少しゆるみが出る。 このように考えるのは技術屋の”性”というものだが、それ以来しばらくの間、プラスのネジを見るたびに水平垂直が気になった。 今の私なら、きちんと締めつけて、かつ水平垂直で止まるネジを発明しようと”妄想”するだろう。 |