一覧へ |
2011/07/16 [ 錯覚補正 ] |
グラフィカルなデザインの仕事をしている人たちに、「A列とB列とではどちらが細長い?」と聞いて回ったことがある。もちろん企みがあってのことだ。返ってきた答えは全員が「それはBにきまってるでしょ!」だった。やったあ!!。 じつはAとBはどちらも同じプロポーションで1対√2だ。ではなぜプロの目で見てもBのほうが長いのだろう。 一般にポスターはB列の用紙を縦使いにしてデザインされる。ここが問題だ。人の目は横に並んでついているせいで、ものの横幅が縮んで見える。目の錯覚である。正方形が縦長に見えてしまうのだ。だから”本当に”正方形に見せようとすれば、少し横長の正方形にしなくてはならない。ちなみに図面類は一般的に建築にかぎらずA列の横使いで、それを見慣れたわれわれは当然、縦使いのポスターは細長く見える。 寺や数寄屋造りの建物によくある丸窓は、じつは真円ではない。左官職人が自分の目で確かめながら円く塗り込めるものだから誰の目にも円く見えるわけで、これを”本当の”丸といっていいと思う。つまり錯覚を補正してはじめて「正方形」や「丸」になるのだ。(国旗の日の丸はどうなってるのだろうか?) 電車の窓などは隅が円くなっているものが多い。この隅丸も錯覚を起こさせる。 窓の隅丸は円弧の四分の一だが、こうして丸めると四隅がふくらんで見えてしまう。そうならないようにするには、円弧と直線のあいだに微妙な曲線をはさんで滑らかに連結させなければならない。そうやって錯覚補正する。 わかってはいても、そこまでやると工業生産品では割にあわないのだろう。 なんでもかでも工業化された現代の錯覚補正されていない視覚情報から、われわれは無意識のうちにストレスを受けている。そんな状況には生物的な危機感を覚える。 なにかうまい解決策はないのだろうか・・・ |