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2011/10/01
[ 派手・ハデ ]
 

”派手”は、めだつとか人目を引くという意味だが、なぜ派手と書くのだろう。そこが気になる。

きれいに刈り込まれた庭木もしばらくすると、元気な葉っぱがピョコっと飛び出す。とても”葉出”だ。
さいきん、歯を矯正中の人が目立つが、むかしは”歯出”な人が目についた。
”刃出”だって怖くて人目を引く。いろいろなハデがあってもいいのではないか。
  
語源辞典によると”派手”の元は「破手」のようだ。三味線の古典的な表現の「本手」に対して、従来の手法を破ったにぎやかな奏法が「破手」という。それがなぜ”派手”になったのだろう。そこが知りたかったのに。
 
 さて、派手な建築は一体どんな”ハデ”だろう。



ソフトバンクの看板を見ると「ゆきのあさ 二のじ二のじの げたのあと」という句?を思いだす。

看板のマークは”=”だけだ。しかも白地に薄いグレーで=。はじめて見たときは奇異な感じを抱いたものだがこれが妙に目立つ、引き立つ。
色や形が氾濫する街中で、ひたすらシンプルでかげのうすいこの看板だけが際だっている。ぼくの目にはひときわ”派手”に映る。
これを考えたデザイナーは、いわゆる”派手”を逆手にとった”ハデ”を演出したのだろう。

”ソフトバンク”なんて文字だけ見れば、やわらかくて怪しげな銀行ぐらいにしか思えない。ところが、”=”がいつのまにか目にやきついてくると、いざ探すとなるとすぐに見つかる。

 おとなしいグレーの=は、騒々しい環境に対しては充分に派手なのだ。



世の中には探すとすぐ見つかるもの、さがしているのになかなか見つからないもの、探してもいないのに目に飛びこんでくるものなど、いろいろある。

すぐ見つかるものの代表は郵便ポストだ。真っ赤な色だけでなく、道路際にあって独立した存在だから目立つ。
かつての電話ボックスもやはり道路際で目立っていた。現在のは街に溶け込ませようとするデザインだからなかなか見つからない。これはデザイン方針の間違い、つまりダメなデザインだ。
どうやら道路際が目立つためのポイントの一つのようだ。

いやでも目につくのは赤提灯。節電ムードの薄暗い街中では、よき雰囲気とともにとくに目立った。

 夜の街は年中節電がいいかも。



地球の重力のせいで、世の中の景色は水平垂直で構成されている。だからこそ斜めは目立つ。

たしか落語だったと思うが、”貸し家あります”という張り紙がなぜか斜めに貼ってある。理由は、家を探して歩いている人は必ず腕組みして首を傾けている。だから、見やすいように斜めにしてあるというわけだ。

消火栓の標識も斜め下に向けて腕が出ていたように思う。普通の人はそんなもの捜したりしないから目にも入らないが、早く見つけようと血まなこになっている消防士には斜めが目立つ。
ちなみに、この斜めの腕には鎖がついていて、何かの拍子で外れてしまっても地上に落ちずに消防士の目にとまりやすくなっているそうだ。
よく考えてある。

 東電の連中に聞かせてやりたい。原発にも”ナナメ”と鎖を採り入れたら?